音楽をこの今に現前させる──寿明義和 ピアノ・リサイタル～二十世紀初頭の諸相～ 篠村友輝哉/YukiyaShinomura

先のピアノリサイタルの反響として、かつての愛弟子、文筆家としてもその思索をますます深めている篠村友輝哉君がNOTEに上梓してくれた渾身の文をご紹介します。

かつての師弟関係もあり、必ずしも客観的な視点で書かれたとは言えないかもしれませんが、そんなことより、コロナ禍以降の私の主立った演奏活動を定点観測で総括してくれていることに面映ゆさを感じると共に、頼もしいパーソナリティを築きつつある彼の成長を嬉しく思います。是非ご一読ください。

音楽をこの今に現前させる──寿明義和 ピアノ・リサイタル～二十世紀初頭の諸相～｜篠村友輝哉/YukiyaShinomura

　演奏会のプログラムの組み方には、演奏家の音楽的な関心や思想、志向、そしてそれらの深さがはっきりと映し出される。寿明義和先生の近年のプログラムは、そのリサイタルが開かれた年が記念年である作曲家の作品を中心とした、音楽史的な視点から組まれていることが多い。これは、一見プログラムの組み方としては定石に思えるが、その視点の置き方に独自性と深みがある。 　例えば二〇二〇年にベートーヴェンの生誕二五〇年を記念して行われた配信演奏会は、「新しい道を」を題され、「ヴァルトシュタイン」と「熱情」という、ピアノ音楽史において大きな転換点となったふたつのソナタが中心に置かれていた。これらのソナタは、ベート

note（ノート）

Pianist 寿明義和 Yoshikazu Jumei

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